株式会社日本創造教育研究所

ワンポイントアドバイス

第192号 米国発「No Rating」とはどんな人事制度か?

■事実と異なる情報が独り歩きしている

私の担当するワンポイントアドバイスでは、今回から数回にわたって、米国において導入が広がっていることで話題になっている「No Rating」の人事制度について、情報提供と私の意見を発信していきたいと思います。

このテーマを選んだのは、No Ratingについての議論が増えるにつれ、「人事評価の廃止」「人事評価はもういらない」のように、刺激的ではありますが実際とは異なる情報が独り歩きしているからです。

私のこれまでの記事でも、誤解をさせてしまう表現をしている部分がありましたので、これから数回はNo Ratingについて起こっている「事実」と私の「意見」をはっきり区別しつつ、キチンとご理解いただくために順序立てて書いていきたいと思います。
 
 
■米国を中心に広がりつつある「No Rating」

2016年の段階で、フォーチュン500の約20%にあたる企業において、No Rating の考えによる人事制度が導入されています。2017年には、50%になるという予測もあり、急速に広がっています。

聞き覚えのある企業では、GEやGAP、マイクロソフト、アクセンチュアなどの企業がNo Ratingを採用しています。

No Ratingと言っても、各企業によって様々な取り組みがあるので、「No Ratingとはこれだ!」と簡単には言えない部分もあるのですが、今回は、No Rating の概要について説明していきたいと思います。
 
 
■人事制度の基本知識

まず前提となる知識として、人事制度の基本構造は、

「等級制度(格づけ)」→「評価制度(点数づけ)」→「給与制度(給与決定)」

という3つの制度の連動によって成り立っています。

何をもって給与額を決めるか(=何で評価するか)によって、

□ 属人給 :年齢や家族構成などによって給与を決める
□ 職能給 :職務遂行能力によって給与を決める
□ 職務給 :担当する職務によって給与を決める
□ 役割給 :担当する役割によって給与を決める
□ 責任給 :担当する責任によって給与を決める
□ 成果給 :つくった成果によって給与を決める

などの呼び名が変わりますが、基本構造はすべて同じです。
 
 
■従来型の人事制度と「No Rating」の違い

従来型の人事制度とNo Ratingの違いは何かというと、企業によって違いが色々とありますが一般的な特徴としては、「評価制度でつけた点数によって給与額を決めない」ということが挙げられます。

従来型の人事制度では、期末に上司が部下一人ひとりを評価して、S~Dの5段階などにランクづけを行い、そのランクに応じて、賞与額や昇給額(減給額)を決定します。No Rating とは、このランクを給与決定に使わないということです。

米国企業で起こっている取り組みとして、No Rating の他には、

□ No Curve :評価結果を正規分布になるように調整しない
       (=S評価は全体の何%まで、という調整をしない)
□ No Calibration :評価結果の部門間での相対的な調整を行わない

というものもあります。一般的に「No Rating」という表現のなかには、「No Curve」や「No Calibration」も含まれて使われています。

さて、No Ratingでは、給与決定に評価結果を使わないのですが、そうすると疑問になるのは、「どうやって給与額を決めるのか?」ということだと思います。給与決定の方法も各企業によっていろいろなやり方があるようですが、多いケースは、【人件費予算を部門ごとに割り振り、予算額内でマネジャーの裁量によって部下の給与額を決定する】というやり方です。これについては、前回のワンポイントアドバイスでも扱いました。
 
 
■マネジャーの裁量が大きくなる

評価結果を給与決定に使わず、マネジャーの裁量で給与を決定するので、次のことが不要になります。

□ 人事評価で、社員さんに点数をつける必要がなくなる
□ 期末評価も必要なくなり、目標も年次で設定する必要もなくなる

また、次のような必要性が生じます。

□ マネジャーが部下の仕事を今まで以上に理解する必要が生じる

ですので、「タッチポイント」や「タッチベース」などのように企業によって呼び名は違いますが、マネジャーと部下が今まで以上にコミュニケーションをとるような仕組みを導入して、目標設定や目標修正、結果へのフィードバックをリアルタイムで行うようにしています。

そのことによって、マネジャーが部下の成長を密接にサポートし、心理的に安心して仕事ができる環境を整えようということです。

加えて、給与額への納得性を高めようというねらいもあります。半年(あるいは1年)に一度、評価のフィードバックを受けるよりリアルタイムでフィードバックを受けていた方が、部下が給与額を見たときに驚くようなことをなくし、「なるほど」「予想した通り」と納得性が高まるというねらいです。
 
 
■「No Rating」の3つの特徴

ここまでが、No Rating の概要です。主な特徴をまとめると、

□ 年次評価において、点数づけ・ランクづけを行わない
□ マネジャーと部下がリアルタイムでコミュニケーションを行う
□ マネジャーの裁量で給与額を決定する

ということになります。次回は、No Ratingがアメリカ企業で広まってきた背景について説明していきたいと思います。

生きがいラボ株式会社
代表取締役 福留幸輔

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