株式会社日本創造教育研究所

ワンポイントアドバイス

第123号 お金でモチベーションは上がらない!?

『望ましい行動に報酬を与えると、モチベーションが向上し、その行動が繰り返される』

ほとんどの人事施策はこの原理に基づいており、一見すると、この原理に関しては疑う余地がないように思えます。しかし、この原理が間違っていたとしたらどうでしょうか?今まで行ってきた施策が根本から崩れてしまうのではないでしょうか?
この原理に一石を投じたのが、ウィスコンシン大学心理学教授のハリー・ハーロウ氏です。

ハーロウ教授は、8匹のアカゲザルを用いた、2週間にわたる学習に関する実験を行いました。3つの手順によって解ける仕掛けのある装置を、サルたちは外部からの強制や刺激を受けたわけでもないのに、熱心に楽しそうに取り組み始め、そして習熟していったのです。

まるで、その活動をすること自体が「報酬」であるかのように。

さらにこの実験で、解いたごほうびとしてエサを与えた場合、サルたちは前よりも間違いを犯し、成功率も低くなったのです。つまり、一般的に信じられてきた原理とは逆に、報酬が望ましい行動を強化するどころか妨げになったのです。

ハーロウ教授はこの実験結果を受け、報酬などの外部からの刺激による動機づけを「外発的動機づけ」と呼び、活動そのものが目的であるような動機づけを「内発的動機づけ」と名づけました。

「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」を更に解明したのが、カーネギーメロン大学院心理学専攻だったエドワード・デシ氏です。デシ氏は、当時に流行していたソマ・パズルを使った実験を行いました。ソマ・パズルは、被験者たちも「おもしろい」「好きだ」と回答したので、実験の課題として最適だったのです。

実験では、被験者の大学生を2つのグループ(A、B)に分け、パズルを組み立てる1時間の実験を3日連続で実施しました。3日間の実験内容は下記の表のようになります。

1日目 2日目 3日目
Aグループ 報酬なし 成功につき
金銭による報酬あり
報酬なし
Bグループ 報酬なし 報酬なし 報酬なし

1時間の実験時間の途中で8分間の休憩時間を設け、その中で継続してパズルに取り組む時間を観察したのです。つまり、その8分間にどれだけパズルに継続して取り組んだかによって、心からパズルを楽しんでいるかを測ろうとしたのです。結果は次の表のようになりました。

1日目 2日目
(Aグループは報酬あり)
3日目
Aグループ 3分半~4分間 5分間以上 およそ3分間
Bグループ 3分半~4分間 3分半~4分間 4分間より少し長く

お気づきの通り、3日間とも報酬のなかった被験者(Bグループ)は、パズルを解くこと自体を楽しいと感じていたにも関わらず、2日目に報酬を与えられた被験者(Aグループ)は、報酬がなくなった途端に、パズルへの興味をなくしてしまったのです。

デシ氏は、繰り返し実験を行いましたが、結果は同様でした。また、マーク・レッパー氏やデイヴィッド・グリーン氏などの心理学者たち、ダン・アリエリー氏などの経済学者たち、その他のたくさんの科学者たちが金銭による動機づけの影響についての実験を行いましたが、結果はデシ氏が行った実験と同じでした。

つまり、「金銭的報酬は、人の内発的動機づけを低下させる」ということが、さまざまな実験によって確認されたのです。

冒頭に紹介した「望ましい行動に報酬を与えると、モチベーションが向上し、その行動が繰り返される」という原理は、一見すると理に適っていますが、実は逆効果になる可能性が高いのです。経営者の皆様が社員様のためを思って行っている施策、例えば、目標達成をしたときのインセンティブや会社への提案に対する報奨金、スキルを習得したときの手当なども、逆に社員様の仕事そのものへのモチベーションを壊している可能性もあります。

自社の動機づけ施策について、一度見直してみてはいかがでしょうか?

生きがいラボ株式会社 代表取締役 福留幸輔
(日創研パートナー・コンサルタント)

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