2025.06.17

「コア・コンピタンス分析」とは?企業がコア・コンピタンスを見極めるべき理由と方法を解説

「コアコンピタンス分析」とは?企業がコアコンピタンスを見極めるべき理由と方法を解説

会社が持つ能力や技術力のうち、その企業の事業・製品・サービスの魅力や市場における競争力の源泉となるような中核的な能力、強みのことを、経営用語でコア・コンピタンスと言います。

規模に関わらず、すべての企業にとって非常に重要な経営資源の一つとなるコア・コンピタンスですが、自社のコア・コンピタンスを把握するには、どうすればいいのでしょうか。

そこで今回は、全国に14,000社以上もの会員企業様を抱え、さまざまな中小企業の経営を支援してきた日創研が、コア・コンピタンスを分析する方法について解説していきます。

また併せて、企業がコア・コンピタンスを分析し把握することの重要性も紹介していきますので、自社の経営戦略を考える上でコア・コンピタンスの分析方法について知っておきたいとお考えの経営者の方、経営幹部の方は、ぜひ参考としてご覧ください。

コア・コンピタンス分析の重要性や目的

コア・コンピタンス分析とは、企業が持つさまざまな能力(コンピタンス)の中から、特に重要な役割を担う中核(コア)となる能力や技術力を探し出していくための一連の作業のことです。

会社の基幹事業や、人気の製品・サービスを生み出す礎となっている中核的な能力や技術力は、企業がこれからの経営戦略や事業展開を考えていく上でも重要な軸になり得ると考えられます。

特に、大企業に比べて資本力や経営資源に乏しい中小企業は、自社の魅力や特徴のうち、独自性が高く競合他社に真似されにくい強みを自覚し、これを活用した「コア・コンピタンス経営」をしていくことが、非常に大切になってくるでしょう。

コア・コンピタンス分析を行うことは、企業が市場における優位性という武器を獲得するために、またコア・コンピタンスを軸としたコア・コンピタンス経営をしていく上で不可欠な作業なのだと理解しておいてください。

コア・コンピタンスの意味とは?見極めるための手順や企業経営における成功事例を解説

コア・コンピタンスと混同されやすい「ケイパビリティ」とは

コア・コンピタンスと混同されたり、間違えられやすい経営用語に、ケイパビリティがあります。

コア・コンピタンスとケイパビリティは、どちらも90年代に提唱され定着した概念であり、企業の強みという意味で使われるところは共通していますが、その対象範囲や強みを分析する際の視点、切り口は以下のように異なります。

コア・コンピタンスとは ブランド力、デザイン力、特定の分野における技術力、開発力など、事業プロセスの一部に見られる自社能力のこと。
ケイパビリティ(組織ケイパビリティ)とは ビジネス上の仕組み、企画の考え方など、事業プロセス全体に横断的に見られる強み、組織的な能力のこと。

両者の違いを理解し、それぞれを軸にした経営戦略を立案・実行することができれば、自社の強みを複数の視点から捉えた上で補完・強化していくことも可能になります。

強みを軸にした経営により、市場における自社の競争力を高めていきたいと考えている場合は、コア・コンピタンスとケイパビリティの違いについて解説した以下の記事も、ぜひ併せてご確認ください。

コア・コンピタンス分析をする際の代表的な手順は2つ

コア・コンピタンス分析をする際の代表的な手順は2つ

コア・コンピタンスの分析において、絶対的な正解とされるような手法・手順はありません。

ただ一般的には、SWOT分析など何らかのフレームワークを使って自社の強み・弱みを洗い出した上で、これをコア・コンピタンスの「3つの要件」と「5つの視点」に照らし合わせて評価し、最も当てはまる部分が多いものをコア・コンピタンスとするやり方が主流となっています。

コア・コンピタンスの3つの要件

  • 顧客に対して何らかの利益をもたらす、または価値創造につながる能力であること
  • 競合企業にとって模倣が困難であり、独自性と市場への優位性が高い能力であること
  • 1つではなく、多様な市場や商品、分野に対して展開・推進が可能な能力であること

コア・コンピタンスを評価する5つの視点

  • 模倣可能性は低いか(Imitability)
  • 移動可能性は低いか(Transferability)
  • 代替可能性は低いか(Substitutability)
  • 希少性は高いか(Scarcity)
  • 耐久性はあるか(Durability)

なお、コア・コンピタンスの候補となる自社の強みをリストアップする方法としては、経営者や社員の主観で強みを洗い出していく方法と、製品やサービスから強みを探る方法があります。

そのためコア・コンピタンス分析の方法には、大きく以下の2パターンがあると言えるでしょう。

  • 自社の特徴や強みからコア・コンピタンスを分析していく方法
  • 自社の製品やサービスからコア・コンピタンスを分析する方法

そこで次の章からは、上記2つの方法でコア・コンピタンスを見極めていく手順や分析する上でのポイントについて、それぞれ紹介していきます。

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自社の強みからコア・コンピタンスを分析する方法

まず、経営陣から現場の社員まで、さまざまな役職・部署・階層・年齢の社員で自社の強みや特徴を書き出していき、それらを評価してコア・コンピタンスを見極める手順は、以下の通りです。

  1. 自社の魅力や特徴、強みとなる可能性があることについて、幅広く書き出していく
  2. 書き出した強みをコア・コンピタンスの3つの要件に照らし、点数をつけて評価する
  3. 要件をすべて満たすもの、点数の高いもののみコア・コンピタンスの候補として残す
  4. 残った候補を、さらにコア・コンピタンスを見極めるための5つの視点で評価していく
  5. 5つすべてにおいて点数が高い項目を、自社のコア・コンピタンスとして定義する

この方法では、自身が働いていて感じる自社の良いところや商材の魅力、競合他社と比較した時の強みについて幅広く社員やスタッフから意見を募り、これを異なる視点で何度も精査し、定量的に評価することによってコア・コンピタンスを分析していきます。

ただ、この分析方法では各々の主観をもとに強みを書き出し・評価していくため、評価の基準があいまいになってしまうという側面もあります。客観的な視点で分析することに重きを置きたい場合は、次に紹介する「自社の製品やサービスからコア・コンピタンスを分析する方法」を採用してください。

自社の製品からコア・コンピタンスを分析する方法

続いて、自社の製品やサービスのうち、特にお客様から人気を獲得している・売れているものから、その根幹となっているコア・コンピタンスを探るための基本的な手順は、以下の通りです。

  1. ホワイトボードや大きな模造紙に、自社の基幹となっている事業名を書き出す
  2. 事業名の周囲に、各事業において特に売れている最終製品を書き出していく
  3. それぞれの事業、最終製品の製造や提供に欠かせない「コア製品」を洗い出す
  4. コア製品と最終製品を線でつなぎ、複数の線でつながっているコア製品のみ残す
  5. コア製品のベースとなっている自社の技術や能力を、箇条書きで書き出していく
  6. 5で書き出した項目を「○○する能力」「△△技術力」などとグループ分けする
  7. 6でグループ化したコンピタンスを、コア・コンピタンスの3つの要件で評価する
  8. 3つの要件すべてを満たしたコンピタンスを、自社のコア・コンピタンスに設定する

この方法では、自社の代表的な製品やサービスといった商材から、それらを支える根っこである能力や技術=コア・コンピタンスを分析していきます。

例えば、最終製品が自動車であった場合はエンジンなどがコア製品に当たり、その開発と製造を支える技術力や職人のスキルなどがコア・コンピタンスだと考えられます。販売等のサービス業の場合は、売り場での接客や魅力的なレイアウトがコア製品、それを支える人材戦略や育成ノウハウ、販売戦略などがコア・コンピタンスだと考えられるでしょう。

コア・コンピタンスは、中長期的な時間と一定の予算をかけて強化していくことになる重要な経営資源です。

ここまでに紹介してきた2つのうちどちらか、または両方の方法で分析を行い、慎重に検討した上で自社のコア・コンピタンスを決定するようにしましょう。

中小企業こそ自社のコア・コンピタンスを分析、把握しよう

中小企業こそ、自社のコアコンピタンスを分析・把握しよう

コア・コンピタンスは、市場における自社の優位性や経営、事業を展開する核となる部分です。

自社のコア・コンピタンスを分析すること、またそのコア・コンピタンスを強化・活用するコア・コンピタンス経営を実践することは、限られた経営資源で大企業と戦わなければならない中小企業にこそ、必要だと考えられます。

コア・コンピタンス経営に興味がある、またはコア・コンピタンス経営を行う必要性を強く感じているという場合は、まず自社のコア・コンピタンスを分析するところから始めてみてください。

なお日創研では、永続的に成長を続けておられる会社の社長様に、自社における取り組みや事例についてお話しいただくセミナー「企業事例に学ぶ社長と幹部の実践学校」を開催しています。

コア・コンピタンス経営を実現するためのノウハウをはじめ、社長と経営幹部が一体となって企業組織の成長を達成するコツについて学びたいという経営者、経営幹部の方は、ぜひ日創研の「企業事例に学ぶ社長と幹部の実践学校」の受講をご検討の上、お気軽にご相談ください。

企業事例に学ぶ社長と幹部の実践学校

社長と幹部が一体となり経営革新を進めている企業に事例や取り組みを発表していただきます。

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