経営戦略と事業戦略の違いとは?策定のポイントについても解説
変化の激しい業界で利益を生み出し続けるためには、経営戦略や事業戦略の策定が欠かせません。しかし、経営戦略と事業戦略の違いを具体的に説明できないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、全国で14,000社以上の会員企業様を持ち、数多くの中小企業の人材育成を支援してきた日創研が、経営戦略と事業戦略の違いや策定ポイントを紹介します。
また、企業経営への理解をさらに深めたい方に向けて、日創研のおすすめセミナーもあわせてご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
経営戦略と事業戦略の違いは?
経営戦略と事業戦略の違いを一言で表すと、「経営戦略は企業全体の方向性を示すもの、事業戦略は各事業においてどのように競争するかを定めるもの」です。
この関係は「経営戦略はどの山に登るかを決めること、事業戦略はその山をどのように登るかを決めること」と例えられることもあります。両者の違いを分かりやすくするため、下記の表にまとめました。
| 項目 | 経営戦略 | 事業戦略 |
|---|---|---|
| 定義 | 企業全体の方向性や事業領域の選択を定める | 選ばれた事業領域での競争方法を定める |
| 目的 | 企業価値の向上と全社的な持続的成長 | 各事業の利益の最大化 |
| 範囲 | 企業全体・複数事業 | 個別の事業・事業部単位 |
| 視点 | 長期的・全体最適 | 中期的・個別最適 |
| 焦点 | どの市場・事業で戦うか | どのように競争に勝つか |
| 成果指標 | 企業価値 全社利益 売上総額 |
売上高 市場シェア 利益率 |
| 立案主体 | 経営トップ 取締役会 経営企画部 |
事業部長 事業責任者 部門管理職 |
つまり、経営戦略をもとに事業戦略を設定するということになります。
- 経営戦略:企業全体が進むべき道筋を定める指針で、どの分野に注力し、どの市場で価値を創出していくのかといった大きな方向性
- 事業戦略:経営戦略に基づき、各事業においてどのように競争し、どのように顧客へ価値を提供していくのかを具体的に定める
次章からは、両者の違いについて項目ごとに詳しく解説していきます。
1. 定義の違い
経営戦略とは、企業全体として「どの方向へ進むのか」「どの事業領域で競争するのか」を定める戦略です。将来の企業像を描きながら、成長分野の選定、新規事業への参入、既存事業からの撤退といった全社的な意思決定を行います。
一方事業戦略は、経営戦略で選ばれた市場・事業領域の中で「どのように競争に勝つか」を決める戦略です。価格、品質、サービス、ブランドなどの要素を踏まえ、競争優位の確立に向けた具体的な方針を設計します。
2. 目的の違い
経営戦略の目的は、企業全体の持続的な成長を実現し、企業価値を高めていくことです。その過程で、限られた経営資源をどの事業にどの程度配分するかを判断し、全体最適を図ります。
一方で、事業戦略の目的は、各事業が市場で競合に打ち勝ち、安定した利益を生み出すことにあります。売上拡大や利益率向上を目指し、事業単位での成長を追求します。
3. 範囲の違い
経営戦略が対象とする範囲は、企業グループ全体や複数事業を含む領域です。組織全体を俯瞰したうえで、長期的な視点から企業の方向性を定めます。
これに対し、事業戦略の対象範囲は、事業部や事業ユニットなどの領域です。それぞれの市場環境や競争状況に応じて、最適な戦略が策定されます。
4. 視点の違い
経営戦略は、長期的かつ全社的な視点で検討されます。社会動向や市場環境の変化を踏まえ、企業としての将来像を描くことが中心となります。
一方、事業戦略は、中期的かつ事業単位の視点で立てられます。担当市場や顧客のニーズに合わせ、競争力をどのように高めるかが主なテーマです。
5. 焦点の違い
経営戦略の焦点は、「どの市場・事業で戦うのか」という選択にあります。成長分野への参入や不採算事業の見直しなど、事業ポートフォリオの構築が重要なテーマとなります。
事業戦略は、「選んだ市場でどう勝つか」に焦点を当てます。差別化戦略、価格戦略、顧客戦略などを通じて、競争優位性を確立することが求められます。
6. 成果指標の違い
経営戦略の成果は、企業価値の向上、全社利益、売上総額、事業ポートフォリオの最適化といった指標で評価されます。企業全体の成長性や安定性が重要な指標となります。
一方、事業戦略の成果指標は、事業ごとの売上高、市場シェア、利益率、顧客満足度、ブランド力などです。各事業の競争力が具体的な数値として表れます。
7. 立案主体の違い
経営戦略の立案は、経営トップ、経営企画部、取締役会など、全社を統括する立場の組織が中心となります。企業の将来を左右するため、経営層の関与が不可欠です。
一方、事業戦略は、事業部長や事業責任者、部門マネージャーなど、現場に近い立場の管理職が主体となって策定します。市場の実態を把握しながら、実行可能性の高い戦略を構築する点が特徴です。
事業戦略の策定ステップ
事業戦略を成果につなげるためには、正しい手順で段階的に策定していくことが重要です。方向性の設定から現状分析、戦略立案、実行と改善までを一連の流れとして整理することで、実行力のある戦略が構築できます。
ここでは、事業戦略の策定ステップについて解説します。
- 方向性を定める
- 現状を把握する
- 戦略を立てる
- 実行と改善
1. 方向性を定める
自社がどこを目指すのかという方向性の明確化です。具体的には、ビジョンやミッションを設定し、「誰に」「どの市場で」「どのような価値を提供するのか」を明確にします。
実務では、将来のあるべき姿(ビジョン)、自社の存在意義(ミッション)、価値観や行動指針(バリュー)を整理することで、戦略の軸が定まります。
あわせて、売上・利益・市場シェアなどの数値目標も大枠で設定しておくと、その後の戦略設計がスムーズになります。経営陣だけで決めるのではなく、現場の意見も取り入れることで、実行力の高い戦略につながります。
2. 現状を把握する
次に、自社の現状と、それを取り巻く外部環境を客観的に把握します。市場環境や競合状況を踏まえながら、機会となる要素と脅威となる要素、そして自社の強みと弱みを整理していきます。
代表的な分析手法には、次のようなものがあります。
- PEST分析:政治・経済・社会・技術の視点から外部環境を整理する
- 5フォース分析:業界構造や競争の激しさを把握する
- SWOT分析:強み・弱み・機会・脅威を整理する
- 定量分析:売上、利益率、顧客数などの数値を分析する
3. 戦略を立てる
環境分析の結果を踏まえ、「どの市場で、どのように勝つのか」という戦略方針を具体化します。あわせて、商品、価格、販路、プロモーション、組織体制などの重点施策も明確にします。
戦略の考え方としては、以下の例があります。
- 既存市場 × 既存商品による市場浸透
- 既存市場 × 新商品による新商品開発
- 新市場 × 既存商品による市場開拓
- 新市場 × 新商品による多角化 など
あわせて、やらないことを決めることも、戦略を機能させるうえで重要なポイントです。
4. 実行と改善
最後のステップは、立てた戦略を具体的な行動計画に落とし込み、実行・検証・改善を繰り返すことです。KPI、スケジュール、責任者を明確にしたうえで施策を実行し、PDCAを回しながら戦略の精度を高めていきます。
一度策定した戦略も、継続的な検証と修正が不可欠です。数値で管理しなければ、成果の有無を正しく判断することはできません。
月次や四半期ごとに定期的な進捗レビューを行うのが一般的です。また、現場任せにせず、経営層が進捗を適切にモニタリングすることが重要です。
事業戦略をたてるうえでの3つのポイント
事業戦略を成功させるためには、市場分析や数値目標の設定だけでは不十分です。自社の強みを正しく理解し、競合との差別化を明確にし、実行まで見据えた戦略設計を行うことが重要になります。
ここでは、押さえておきたい3つのポイントを解説します。
- 自社の強みと顧客価値を結びつける
- 競合との差別化を明確にする
- 実行できる戦略にする
1. 自社の強みと顧客価値を結びつける
事業戦略の出発点は、「自社は何が得意で、それが誰にどのような価値をもたらすのか」を明確にすることです。
たとえ技術力やブランド力、人材といった強みを持っていたとしても、それが顧客の価値につながらなければ、ビジネスとしての意味は生まれません。自社の得意分野を、顧客が本当に求めている価値へと転換する視点が不可欠です。
まずは、自社のコアとなる強みを洗い出し、整理します。そのうえで、顧客が抱える課題やニーズに対して、その強みがどのような解決策や価値を提供できるのかを具体的に考えます。
この「強み」と「顧客価値」が重なる領域を軸に戦略を構築することで、競争力の高い事業戦略が形成されます。
2. 競合との差別化を明確にする
「なぜ顧客は自社を選ぶのか」という問いに、一言で答えられるかどうかは、事業戦略の完成度を測る重要な指標です。どれほど優れた製品やサービスであっても、競合と違いがなければ、最終的に価格競争に陥ってしまいます。成功する事業戦略には、自社ならではの価値(差別化ポイント)が存在します。
差別化を実現するためには、品質、顧客体験、ブランド、スピード、サポート体制など、他社にはない強みを打ち出す必要があります。単に「安い」という理由だけで選ばれるのではなく、「この会社だから選ばれる」状態を目指すことが重要です。
そのためにも、競合を客観的に分析し、市場の中での自社の立ち位置を明確にするポジショニング戦略が欠かせません。
3. 実行できる戦略にする
事業戦略の目的は、策定すること自体ではなく、実行して成果を出すことにあります。理想論だけを追うのではなく、自社のリソース、組織体制、かけられる時間に見合った実行可能な戦略設計が重要です。
実行段階では、KPIやOKRなどの具体的な目標指標を設定し、現場が迷わず行動できるように、役割や責任、評価の仕組みを明確にする必要があります。また、市場環境は常に変化するため、一度立てた戦略を固定化するのではなく、定期的に検証と改善を行う柔軟性も欠かせません。
PDCAやOODAなどのフレームワークを活用しながら、継続的に戦略を磨き上げていく姿勢が、最終的な成果につながります。
経営戦略と事業戦略の違いを理解しよう

経営戦略と事業戦略は混同されがちですが、定義・範囲・目的といった観点から見ると、それぞれ明確な違いがあります。両者の基本を正しく理解することで、より実効性の高い経営施策の立案につながります。ぜひ本記事の内容を、自社の経営や事業運営にお役立てください。
なお日創研では、経営戦略をはじめとした企業経営に関する知識をより深めたい方に向けて、各種セミナーやプログラムを多数ご用意しています。ここでは、その中から3つをご紹介します。
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「経営理念と戦略ワンポイントセミナー」は、企業が「何のために存在するのか」「なぜ経営を行うのか」といった根幹にあたる経営理念(企業の志や使命)の意味や重要性を、改めて学ぶことができます。
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自社の強みを明確にしながら、安定した利益の確保と持続的成長を実現したい方におすすめのコースです。
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理念経営に必要な要素とは何か? 経営の根幹となる経営理念を多角的に検証。 成功企業の志の秘密を探り、成功企業になった要因を明確にします。また志を持って経営に取り組む中小企業経営者の経営手法を事例として研究します。






