2025.05.30

コア・コンピタンスの意味とは?見極めるための手順や企業経営における成功事例を解説

コアコンピタンスの意味とは?見極めるための手順や企業経営における成功事例を解説

規模に関わらず、すべての企業組織は市場において常に激しい変化と競争にさらされています。

そのような状況の中で、特に中小企業が自社の市場優位性を確立し、生き残っていくために重要だとされているのが「コア・コンピタンス」を活かした経営です。

そこで今回は、全国に14,000社以上もの会員企業様を抱え、さまざまな中小企業の経営や人材育成を支援してきた日創研が、コア・コンピタンスという言葉の意味や、コア・コンピタンス経営の重要性について、わかりやすく解説していきます。

また併せて、自社のコア・コンピタンスを見極めるための手順や、その際に必要となる5つの視点、コア・コンピタンス経営の成功事例も紹介していきますので、ぜひ参考としてご覧ください。

「コア・コンピタンス」の意味とは?

コア・コンピタンス(Core competence)とは、1990年代に経営学者によって提唱され定着した経営用語、概念の一種です。

能力という意味の「コンピタンス」と中核という意味の「コア」を組み合わせた言葉であり、経営用語としては「企業が利益を獲得したり、競争力を維持・向上する上で中核となる能力や技術」「他社には真似できない、その企業だけが持つ経営資源」という意味で使われています。

一般的に企業組織は、業界や規模に関わらず多種多様な能力(コンピタンス)を持っていますが、そのうち製造や営業といった事業プロセスの一部に見られる強みであり、かつ以下の3つの要件をすべて満たしているものだけが、コア・コンピタンスに当たると考えられているのです。

コア・コンピタンスの3つの要件

  • 顧客に対して、自社から何らかの利益や価値、利便性をもたらす能力であること
  • 競合に対して、独自性と優位性が高く、模倣されにくい能力であること
  • 市場に対して、複数の商品や分野、市場で応用・推進が可能な能力であること

なおコア・コンピタンスの具体的な例としては、ブランド力や技術力、デザイン力、特定の分野において他社がまだ獲得していない・できないスキルやノウハウ等が挙げられるでしょう。

企業が「コア・コンピタンス経営」を行う意味や重要性

コア・コンピタンス経営とは、コア・コンピタンスを経営上の重要な軸の一つとして位置づけ、経営戦略を立案・実行していく経営手法のことです。

市場で競合他社に打ち勝ち、時代の変化に対応しながら事業を継続していくには、自社の競争優位性の源泉となるコア・コンピタンスを理解し、共有・強化していかなければなりません。

特に、限られた経営資源だけで市場や時代の変化に適応する必要がある中小企業にとってこそ、自社独自の強みや魅力を自覚し、これを活用した経営を行うことが非常に大切になってきます。

コア・コンピタンスのない中小企業は、競合他社による模倣の他、経済状況や市場の変化などの外的な要因によって簡単に競争優位性を失ってしまう可能性が高いです。中小企業だからこそ、コア・コンピタンスを軸にしたコア・コンピタンス経営をする必要があると覚えておきましょう。

日創研が「中小企業にこそコア・コンピタンス経営の実践が必要」と考える理由とは?

コア・コンピタンスと「ケイパビリティ」の意味の違い

コア・コンピタンスと同じく企業の強みという意味を持つことから、一緒に使われたり、混同されやすい言葉に「ケイパビリティ(capability)」があります。ケイパビリティとは、企業の事業プロセス全体(バリューチェーン)において組織が発揮する能力、技術などの強みのことです。

事業の一部ではなく、組織に横断的に見られる組織的能力を指す言葉であるため、日創研においては「組織ケイパビリティ」と呼んでいます。具体例としてはビジネスの仕組み、製品のデザインにおける方向性や特徴、商品やサービスを企画・管理する時の考え方等が挙げられるでしょう。

なお、コア・コンピタンスとケイパビリティの代表的な違いは、強みを探す際の視点にあります。

コア・コンピタンスの意味が「事業プロセスの一部に見られる強み」であるのに対し、ケイパビリティは「事業プロセス全体に横断的に見られる強み」と捉えるのが一般的です。企業の中核的な能力であるコア・コンピタンスは、複数の組織ケイパビリティによって構成されているのです。

自社のコア・コンピタンスを理解し、コア・コンピタンス経営をしていきたいと考えているなら、コア・コンピタンスとケイパビリティでは意味や分析する際の視点・切り口が異なること、また、そのために両者が区別して使われているということは、理解しておくようにしましょう。

企業が自社のコア・コンピタンスを見極める手順は?

企業が自社のコアコンピタンスを見極める手順は?

ここからは、企業が自社のコア・コンピタンスを把握するための一般的な手順と、自社のコンピタンスの中からコア・コンピタンスとなる能力・技術を見極め、絞り込んでいくための5つの視点について紹介していきます。

企業が自社におけるコア・コンピタンスを見極めていくための手順は、以下の3ステップです。

【ステップ1】自社の強みを洗い出す

まずは、自社における強みは何か、洗い出す作業から始めましょう。具体的には、思いつくままに自社の強みや魅力、また、独自性が高いと感じるところを幅広く書き出してみてください。

なおこの時、書き出す内容や担当者の階層・役職・年齢等に制限を設ける必要はありません。

経営陣や経営幹部だけでなく、さまざまな部署の社員にも協力してもらって、コア・コンピタンスに該当する可能性がある能力や技術、ノウハウの他、企業風土や文化等も含め、自社の魅力や特徴だと思うところをどんどん書き出していきましょう。

【ステップ2】強みを一覧にして評価する

自社の魅力や強みを書き出したら、これらを一覧にリストアップしてまとめ直し、先述したコア・コンピタンスの要件(以下)と照らし合わせ、どのくらい当てはまるかを評価していきます。

  • 顧客に対して、自社から何らかの利益や価値、利便性をもたらす能力であること
  • 競合に対して、独自性と優位性が高く、模倣されにくい能力であること
  • 市場に対して、複数の商品や分野、市場で応用・推進が可能な能力であること

なお評価する際には、ステップ1で出したコンピタンスがどれくらい上記の要件を満たしているかという基準で点数をつけるようにすると、それぞれの評価を定量的に確認しやすくなります。

点数が高いものほど自社のコア・コンピタンスになる可能性が高い項目だと考えられるので、上位のもののみ残して、次のステップに進みましょう。

またリストアップした強みを評価する際は、ベンチマークとなる競合他社のコア・コンピタンスを予測し、それらがどのくらいコア・コンピタンスの要件を満たしているのかを点数化して、自社のコア・コンピタンス候補と比較するのもおすすめです。

【ステップ3】強みを絞り込んでいく

ここからは検討の結果、コア・コンピタンスの要件に当てはまる部分が多いと評価された項目について、さらに以下の5つの視点から評価し、自社のコア・コンピタンスとして定義するのにふさわしいかどうかを判断していきます。

  • 模倣可能性は低いか(Imitability)
  • 移動可能性は低いか(Transferability)
  • 代替可能性は低いか(Substitutability)
  • 希少性は高いか(Scarcity)
  • 耐久性はあるか(Durability)

コア・コンピタンスは、一度設定するとその後5〜10年もの長い時間をかけて全社的に共有・強化していくことになる重要な経営資源です。他社のコア・コンピタンスと似た独自性・希少性が低いものや、すぐに競争優位を失ってしまうような耐久性のないものでは設定する意味がありませんので、複数の視点から各項目を精査し、慎重に決定するようにしましょう。

コア・コンピタンス経営に成功された企業の事例をご紹介!

ここからは、私たち日創研が経営支援をさせていただいたお客様の事例の中から、実際にコア・コンピタンス経営に成功されたエースカーゴ株式会社様の事例について、紹介していきます。

滋賀県に本社を置くエースカーゴ株式会社様は、商品を購入されたお客様と製造・販売された企業様双方のために「大切に荷物を運びたい」という想いから、1991年にナカジマ配送として創業しました。

創業当初は、地域密着型の配送業者としてサービスを提供していましたが、道路状況の悪いエリアでの豊富な配送経験から、「2人1組での配送技術の高さと接客」が自社ならではの強みだと気づきます。

そこで、その配送技術を自社のコア・コンピタンスと位置づけて強化し、大型家電や大型家具を2人1組で安全に運んで設置する「技術物流」を全国対応で提供するというかたちで事業を展開。

その結果、2025年4月現在には滋賀県だけでなく福井県、東京都、神奈川県、千葉県といった関東圏にまで営業所を有するようになり、2人1組での技術物流に特化した配送事業者として、日本全国で質の高い配送を実現できるまでに成長されました。

日創研を経営や人材育成に活用されたお客様の声、実績はこちらをチェック!

コア・コンピタンスの意味と重要性を知ることが、中小企業経営を成功させる第一歩になる

コアコンピタンスの意味と重要性を知ることが、中小企業経営を成功させる第一歩になる

限られた経営資源で大企業と戦い、市場で生き残っていかなければならない中小企業にこそ、自社独自の強みであり、中核的な能力であるコア・コンピタンスを的確に把握すること、またこれを活かしたコア・コンピタンス経営を実践していくことが強く求められます。

コア・コンピタンスの意味や、コア・コンピタンス経営の重要性を理解することは、中小企業が経営を成功させるための第一歩です。

自社の強みを分析・理解することは、会社や社員さんたちの未来を守ることにもつながりますから、この機会にぜひ、自社のコア・コンピタンスについて考えてみてくださいね。

なお日創研では、コア・コンピタンスの概念やコア・コンピタンス経営の計画を立案・実践する方法について学びたいという経営者、経営幹部の方に向けて「業績アップ上級コース」を開催しています。

コア・コンピタンス経営を実践したいけど方法がわからない、自社のコア・コンピタンスの見極めがうまくいかないなどとお悩みの場合は、日創研の「業績アップ上級コース」、そして上級コースの受講前に修了が必要な「新しい時代の業績アップ6か月セミナー」の受講を併せてご検討の上、お気軽にご相談ください。

業績アップ上級コース

将来を見すえた顧客視点を身につけ、成功戦略を構築する。「コア・コンピタンス経営の実現」に向けて『コア・コンピタンス育成計画書』を作成する。

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