企業の成功事例からみる経営戦略|成長につなげる戦略のポイントとは?
経営戦略という言葉の概要は理解できていても、企業が実際にどのように経営戦略を策定し、実行しているのかを具体的にイメージするのは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、全国で14,400社以上の会員企業様を持ち、数多くの中小企業の人材育成を支援してきた日創研が、実際の企業における経営戦略の事例を紹介します。あわせて、企業を成功へと導く経営戦略を立てるためのポイントについても解説します。
実際の企業がどのような戦略を選択し、成果につなげてきたのかを紹介しますので、自社の経営戦略づくりの参考にしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
経営戦略とは?基本知識を整理
経営戦略とは、企業が将来に向けてどの方向に進むのかを定め、そのために限られた経営資源をどこへ集中させ、どのように競争優位を築くかを決める長期的な方針のことです。
企業が活用できる人材・資金・時間といった経営資源には限りがあります。そのため、すべての分野に同時に力を入れることは現実的ではありません。
そこで重要になるのが、「どの顧客に対して」「どのような価値を」「どの手段で提供するのか」と注力すべき領域を選び取ることであり、この意思決定の軸となるのが経営戦略です。この経営戦略がはっきりすると組織全体の方向性が統一され、判断や行動に一貫性が生まれます。
また、経営戦略は「やらないこと」を明確にする役割も担います。不要な活動を減らし、成果につながる取り組みに集中しやすくなる点も特徴です。
経営戦略の必要性
経営戦略は、変化の激しい環境の中でも企業が継続的に成果を出し続けるために欠かせません。
市場環境や顧客ニーズは常に変化しています。明確な経営戦略がない場合、短期的・場当たり的な判断が増加し、施策の一貫性や社内の判断基準にブレが生じかねません。
特に中小企業は、大企業と比べて使える経営資源が限られています。そのため、どこに力を集中させるのかを明確にする必要性は、より一層高いといえるでしょう。
事業戦略との違いは?
経営戦略と事業戦略は似た言葉ですが、役割と意思決定の範囲が異なります。
- 経営戦略:企業全体の方向性を示すもの
- 事業戦略: 個々の事業でどのように勝つかを定めるもの
経営戦略では、「どの事業に参入するのか」「どの市場を主戦場にするのか」といった全社レベルの判断を行います。一方、事業戦略では、選択された事業の中で「どの顧客を狙うのか」「価格設定や差別化をどのように行うのか」といった具体的な競争方法を決めます。
経営戦略が曖昧なまま事業戦略を立てると、方向性がぶれやすくなります。そのため、まず経営戦略を定め、そのうえで事業戦略を設計し、最終的に具体的な施策へと落とし込んでいく流れが重要です。
経営戦略に使われる主な手法
経営戦略を具体化するうえでは、代表的な戦略手法を理解しておくことが重要です。
ここでは、経営戦略でよく用いられる主な手法について、それぞれの特徴を解説します。
- ブルーオーシャン戦略
- 多角化戦略
- 価格戦略(コストリーダーシップ戦略)
- 差別化戦略
- 集中戦略
1. ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略とは、競争のない市場を創り出すことを目的とした戦略です。既存の競合と争うのではなく、新たな価値軸によって独自の市場を切り開く点に特徴があります。
レッドオーシャンと呼ばれる既存の市場は、価格競争や差別化競争が激しくなりやすく、利益を出し続けることが難しくなりがちです。そこでブルーオーシャン戦略では、市場の前提そのものを見直し、競争を避けながら高収益を狙います。
2. 多角化戦略
多角化戦略とは、複数の事業を展開することで成長機会の拡大とリスク分散を図る戦略です。特定の事業に依存しない経営体制をつくることが目的となります。
単一事業に依存している場合、市場の縮小や環境変化の影響を強く受けやすくなりますが、多角化を進めることで収益源を分散でき、長期的な安定成長につながります。
多角化には、既存事業の強みを活かして関連分野へ進出する方法と、まったく異なる分野へ参入する方法があります。
3. 価格戦略(コストリーダーシップ戦略)
価格戦略は、業界内でも低いコスト構造を実現し、競争優位を築くことを目的とした戦略です。低価格を武器に市場での優位性を確保します。
他社よりも低いコストで事業を運営できれば、価格を下げても利益を確保しやすくなり、価格競争が起きた場合でも有利な立場を維持できます。
価格戦略を成功させるには、規模の経済を活かした大量生産や、業務の効率化などが欠かせません。ただし、中途半端な低価格は価格以外の魅力が伝わらず、安いだけの会社という印象を与えるリスクがあるため注意が必要です。
4. 差別化戦略
差別化戦略とは、価格以外の価値で顧客に選ばれることを目指す戦略です。独自の強みを打ち出すことで、価格競争を避けやすくなります。
他社にはない独自の価値を提供できれば、高付加価値や高い利益率を実現しやすくなります。競争の軸を価格から別の要素へ移す点が大きな特徴です。
差別化の要素としては、品質やデザイン、ブランド力、サポート体制などが挙げられます。ただし、顧客が差別化ポイントを理解できなければ意味がないため、分かりやすく伝える工夫が求められます。
5. 集中戦略
集中戦略とは、特定の市場や顧客層に経営資源を集中させる戦略です。限られたリソースを有効に活用し、確実に勝てる領域をつくることを目的とします。
特に経営資源が限られる企業にとっては、広い市場で大企業と競争するよりも、狭い領域に絞って戦う方が成果につながるケースも少なくありません。
具体的には、特定の業界・地域・顧客層に特化し、ニッチ市場でナンバーワンを目指すといった戦略が挙げられます。
【事例を紹介】成長につなげる企業の経営戦略

ここでは、経営戦略によって危機を乗り越え、成長につなげた企業の成功例を紹介します。
いずれの企業も、自社の強みや理念に立ち返り、環境変化に適応する戦略を実行してきました。実際の事例を知ることで、経営戦略を考える際のヒントが得られるでしょう。
1. 株式会社seed
株式会社seedは、健康や環境、生産者への配慮を大切にした「エシカルスイーツ」を軸に、国産のこだわり食材を使用した商品を展開しています。
株式会社seedは、南大阪で飲食店を複数経営していましたが、2018年の大型台風による被災やコロナ禍の影響で大きな打撃を受けました。こうした厳しい環境の中で、同社は経営理念に立ち返り、新たな事業モデルを模索します。
そこで、コロナ禍の最中に全国向けの卸売販売を開始し、「エシカル」をテーマにした商品開発へと舵を切りました。現在は直営店に加え、ECや卸売を通じて販路を拡大し、2024年には売上が前年比112%と着実な成長を遂げています。
国産無添加素材や規格外フルーツの活用など、素材へのこだわりを強みとし「人と地球にやさしい商品開発力」をコア・コンピタンスとした経営戦略が成長を支えています。
2. エースカーゴ株式会社
エースカーゴ株式会社は、物流・配送サービスを全国で展開する企業です。大型家電や家具の配送・設置といった「技術物流」を強みとし、顧客宅までの最終配送であるラストワンマイルを2人1組で対応しています。
かつては家具店の配送業務として幅広く対応していましたが、業務量の割に利益が出にくく、経営の安定に課題を抱えていました。そこで同社は、「2人で運ぶ配送」に特化する戦略へ転換します。
業務領域を絞り込むと同時に人材育成を強化し、強みを明確化したことで、安定した利益体質へと改善。配送品質の向上により顧客満足度も高まり、滋賀県外からの依頼も増加しました。
さらに、他社へのノウハウ提供やシステム支援など、新たな収益源を生み出し、事業の広がりを実現しています。
3. 株式会社浜屋
株式会社浜屋は、リユース・リサイクルを中心としたビジネスを展開する企業です。家庭や企業から出る不要品を再利用及び再資源化し、国内外へ流通させています。
株式会社浜屋は「もったいない」の考え方を軸に、家電や家具、自転車など、不要品を単なる廃棄物として扱わず、付加価値のある商品として循環させる点が特徴です。
回収から付加価値化、販売までの流れを一貫して最適化し、全国の拠点ネットワークを活用。さらに、海外販路を開拓することで、国内では価値が低い物でも海外市場で価値を高める戦略を実行しています。
なお同社は、弊社の「ビジネスモデルゼミ」を受講されており、今後さらにビジネスモデルに磨きをかけ、成長を続けていくことが期待される企業です。
成功に導く経営戦略のポイント
経営戦略を立てるだけでは、必ずしも成果につながるとは限りません。重要なのは、戦略をどのような考え方で設計し、実行へ結びつけるかです。ここでは、経営戦略を成功に導くために押さえておきたいポイントを解説します。
- 自社の強みに集中した戦略を立てること
- 市場・顧客を絞ること
- 実行できるレベルまで具体化すること
1. 自社の強みに集中した戦略を立てること
経営戦略の本質は、すべての分野を平均的に伸ばすことではなく、他社よりも優位に立てる領域に経営資源を集中させることにあります。自社の強みを起点に戦略を考えることで、持続的に勝ち続けやすくなります。
強みは、必ずしも特別な技術や圧倒的なシェアである必要はありません。技術力の高さだけでなく、顧客対応力、対応スピード、特定顧客への深い理解なども、十分に競争優位となり得ます。
大企業と同じ土俵で勝とうとはせず、フレームワークなどを活用して自社の強みを分析すると、戦略へ落とし込みやすくなります。
2. 市場・顧客を絞ること
戦略の対象となる市場や顧客が曖昧なままでは、商品設計や価格設定、マーケティング、営業施策のすべてが中途半端になりがちです。「誰の」「どのような課題を解決するのか」をはっきりさせることで、戦略全体に一貫性が生まれます。
すべての人を対象とした商品やサービスは、結果として誰にも強く刺さらないことが少なくありません。特にBtoBビジネスであれば、業界や企業規模、抱えている課題ごとに細かく分けて考えることが有効です。
3. 実行できるレベルまで具体化すること
どれほど優れた経営戦略でも、現場で実行されなければ成果は生まれません。抽象的なスローガンにとどまっていては、社員が何をすべきか判断できないためです。
そのため、戦略は具体的な行動に落とし込む必要があります。誰が、いつまでに、何を行うのかを明確にし、数値目標やKPIを設定することが重要です。
さらに、定期的に進捗を確認し、必要に応じて修正する仕組みを整えることで、戦略が形骸化するのを防げます。
経営戦略を立てるうえで役立つフレームワーク
経営戦略を考える際には、フレームワークを活用して状況を整理することが重要です。フレームワークを使うことで、自社の立ち位置や市場環境を客観的に把握し、戦略の方向性を論理的に導きやすくなります。
ここでは、経営戦略の立案に役立つ主なフレームワークを紹介します。
- SWOT分析
- 3C分析
- PEST分析
1. SWOT分析
SWOT分析は、自社の立ち位置と戦うべき方向性を整理できるフレームワークです。内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)の両面から現状を把握できる点が特徴です。
SWOT分析では以下4つの要素を整理します。
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
これらをはっきりさせることで、どこで勝てるのか、どの領域は避けるべきかが見えてきます。
活用する際は、内部要因である強みと弱み、外部要因である機会と脅威を混同しないことが重要です。また、強みと機会を掛け合わせた視点は、戦略の軸になりやすい傾向があります。単に書き出して終わるのではなく、具体的な戦略の選択につなげることがSWOT分析を活かすポイントです。
2. 3C分析
3C分析は、競争に勝つための対策を考えやすくなるフレームワークです。市場と競合、自社の関係性を整理することで、競争優位の源泉を明らかにできます。
3C分析は以下3つの視点の「C」で構成されます。
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
この3つを整理することで、顧客に選ばれる理由を導くことが可能です。
分析の際は、顧客理解を最優先にすることが重要です。3Cの中でも、最初に顧客を深く理解することで、戦略の精度が高まります。競合との違いを言語化し、自社ができることだけでなく、顧客が本当に求めている価値を重視する姿勢が求められます。
3. PEST分析
PEST分析は、中長期的な視点でリスクとチャンスを把握できるフレームワークです。自社ではコントロールできない外部環境を整理することで、将来の経営判断に役立てます。
PEST分析では、以下4つの観点から外部環境を分析します。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
これにより、今後の事業に影響を与える可能性のある要因を幅広く洗い出すことができます。
活用する際は、すぐに影響が出るものと、将来的に影響が現れるものを分けて考えることが大切です。SWOT分析の機会や脅威と組み合わせて使うと、より効果的に戦略立案へつなげられます。
経営戦略の事例から成功の糸口を見つけよう

成功している企業には自社の強みを理解し、環境変化に応じて戦略を見直しているという共通点があります。自社の経営を改めて見直したいと考えている方に向けて、ここでは弊社が提供しているおすすめのセミナーを紹介します。
1. 田舞塾
「田舞塾(たまいじゅく)」は、経営者や経営幹部を対象とした1年間にわたる長期セミナーです。経営の総合力を深く磨くことを目的としており、MBAでも用いられているケースメソッドを中心に学ぶ本格的なプログラムとなっています。
実際の企業事例をもとにしたケースメソッド授業では、参加者同士で討議を行いながら、意思決定力や思考力を鍛えていきます。加えて、著名な講師による講演や質疑応答、企業訪問や異業種交流の機会も用意されています。
単なる講義を聞くだけではなく、他の参加者や外部講師、ケース提供者との対話を通じて、経営全体を多角的に捉える力を養います。腰を据えて経営を見直したい方に適した内容といえるでしょう。
2. 業績アップ上級コース
「業績アップ上級コース」は、業績アップ6か月セミナーを修了した方を対象とした上級プログラムです。顧客価値に基づく戦略立案、いわゆるコア・コンピタンス経営の実現をテーマとしています。
このセミナーでは、自社の強みであるコア・コンピタンスを明確にし、それを起点とした戦略策定を行います。中長期的に利益や業績を伸ばし続けるための経営手法を理解し、実践的なアドバイスや計画作成の支援を受けられる点が特徴です。
具体的には、顧客ベネフィットと自社の利益をどのように結びつけるかを設計する方法や、中心となる強みの見つけ方、磨き方を学びます。
顧客視点での価値提供を重視しているため、売上拡大だけでなく、継続的な利益向上を目指したい経営者におすすめのセミナーです。

経営は総合力であり、明確な判断基準や迅速な意思決定が常に求められています。経営者は経営センス、論理的思考、戦略思考を極限まで高めていかなくてはなりません。多くの経営者とのディスカッションや企業ケースを学び、多くの刺激と情報を得ましょう。






