2025.06.2

ケイパビリティとコア・コンピタンスの違いを解説|企業が理解・活用することのメリットとは?

ケイパビリティとコアコンピタンスの違いを解説|企業が理解・活用することのメリットとは?

「競合他社にない自社独自の強み」のことを、経営用語でケイパビリティやコア・コンピタンスなどと言いますが、この2つの言葉の定義には、どのような違いがあるのでしょうか。

そこで今回は、全国に14,000社以上もの会員企業様を抱え、中小企業の経営や人材育成を広く支援してきた日創研が、ケイパビリティとコア・コンピタンスの違いについて解説していきます。

また併せて、ケイパビリティとコア・コンピタンスの違いを理解し、企業経営に役立てていくことのメリットや注意点の他、自社の強みを見極め、強化していくための基本的な手順やフレームワークについても紹介していきますので、ぜひ参考としてご覧ください。

ケイパビリティとコア・コンピタンスの違いとは

ケイパビリティ(Capability)とは、企業組織に横断的に見られる組織的な強み、能力、技術等のことです。特定の個人や部署が持つ強みではなく、製品やサービスの製造・流通・販売・マーケティングといった事業プロセス全体(バリューチェーン)において他社に勝る、優位性のある強みのことで、日創研においては「組織ケイパビリティ」と呼んでいます。

一方でコア・コンピタンス(Core competence)とは、企業が市場において競合他社に打ち勝つための優位性の源泉となるような中核的な能力、技術、特性のことです。

組織全体ではなく営業やデザイン、製造など、特定の事業分野やビジネスプロセスの一部に見られる強みを指す言葉であり、複数のケイパビリティによって構成されています。

ケイパビリティとコア・コンピタンスは、どちらも「その企業独自の強み」を意味する経営用語であり、90年代に提唱され定着した概念であることから、近年では区別されずに使われることもあります。

しかし厳密には、特に強みを分析する際の視点・切り口において両者には違いがあるのです。

以下の一覧に、ケイパビリティとコア・コンピタンスの主な違いについて簡単にまとめましたので、2つの言葉の違いを理解する上での参考としてご覧ください。

ケイパビリティとコア・コンピタンスの違いまとめ

 

ケイパビリティ コア・コンピタンス
視点や対象範囲の違い 事業プロセス全体に見られる強みのこと、企業の組織的能力。 事業プロセスの一部に見られる強み、企業の中核的な能力。
一般的な定義の違い 他社と比較して優れた、市場において優位性の高い自社組織の能力、強みのこと。
例)ビジネス上の仕組み、企画の考え方 など
他社には真似のできない独自性や希少性の高い能力、技術、スキル、ノウハウなどのこと。
例)ブランド力、技術力、デザイン力 など

なお、コア・コンピタンスという言葉・考え方の意味と活かし方、またその成功事例については、以下の記事で詳しく紹介しています。興味のある方は、こちらも併せてご確認ください。

ケイパビリティとコアコンピタンスの違いを理解するメリット

場合によっては、区別されずに使われることもあるケイパビリティとコア・コンピタンスの違いを理解し、経営に活かしていくことのメリットとしては、大きく以下の3点が挙げられます。

  • 強みを複数の観点から捉えることで、両者の補完と強化が可能になる
  • 時代や状況の変化等、外部の要因に左右されにくい経営の軸を複数持てる
  • 自社の魅力や強みを人材に伝えやすくなるため、採用活動にも役立つ

市場や顧客ニーズの変化が激しい現代において、会社としての自社の中核的能力と組織的能力の両方を的確に把握し、経営の軸としておくことは、リスクヘッジを図る上で非常に効果的です。

また特定の事業分野ではなく、組織全体に横断的に見られる強み・能力であるケイパビリティは、長い時間をかけて培われてきた企業風土、組織文化から生まれているケースも多いため、他社に模倣されにくいという特徴があります。

ケイパビリティとコア・コンピタンスの違いを理解し、それぞれの視点から強みを分析・把握しておくことは、経営戦略を考える際はもちろん、職場としての自社の魅力を募集人材に伝える上でも大いに役立つと言えるでしょう。

ケイパビリティやコア・コンピタンスを重視する際の注意点

ここからは、ケイパビリティやコア・コンピタンスを経営の重要な軸として捉え、これらを活かした企業経営をしていく際に注意するべき3つのポイントについて、順に紹介していきます。

強化するには時間的・経済的コストが必要であると理解する

ケイパビリティもコア・コンピタンスも、企業が長い時間をかけて試行錯誤を繰り返し、少しずつ構築・確立してきたものです。

そのため新たに開発したり、既存のものを強化しようと思うと、時代や競合他社の変化によって無価値化してしまうことがないように、投資の対象や範囲を見直しながらじっくり育てていかなければなりません。具体的には、少なくとも数年の時間と一定額の費用が必要になるでしょう。

今後、ケイパビリティやコア・コンピタンスを重視した経営をしていきたいと考えているなら、それぞれの強化には中長期的な視点で取り組む必要があること、またある程度のコストがかかることは、十分に理解しておいてください。

分析の際は、自社だけでなく他社の視点も取り入れる

ずっと同じ会社で働いていると、良くも悪くも自社の特徴がわからなくなってしまうものです。

そのため自社のケイパビリティやコア・コンピタンスを分析する際には、いくつかの競合他社をベンチマークとして設定し、自社の特徴を相対的・客観的に数値で評価することによって、強みを明確化していくと良いでしょう。

ケイパビリティの分析時は、暗黙知の部分にも注目する

企業の特徴や強みの中には、大きく形式知と暗黙知の2種類があります。形式知とは、簡単に言うと言葉や数値、図表など、はっきりと目に見える形で示すことができる知識のことです。

一方で暗黙知とは、見える形で提示や共有ができない知識のこと。具体例としては、個人的な経験によって培われてきた勘や感覚、身につけてきた習慣、職人技などがこれに当たります。

ケイパビリティやコア・コンピタンスを分析・把握する際は、数値化や言語化が可能な形式知だけでなく、まだはっきりと認識・言語化されていない暗黙知の部分にも注目して、自社の特徴を洗い出していくようにしましょう。

ケイパビリティとコア・コンピタンスを見極める方法

ケイパビリティとコアコンピタンスを見極める方法

ここからは、自社のケイパビリティとコア・コンピタンスを分析・把握する方法について紹介していきます。企業組織におけるケイパビリティ、コア・コンピタンスを見極める基本的な手順は、それぞれ以下の通りです。

自社のケイパビリティを把握する手順

  1. バリューチェーン分析により、自社の主活動・支援活動における強みを洗い出す
  2. 洗い出した自社の強みと他社の強みを比較し、相対的な優位性を基準に点数を付ける
  3. 自社の強みの中で、特に競合他社への優位性が高いものをケイパビリティに設定する

なおバリューチェーン分析とは、企業のバリューチェーンをお客様に自社商材を届けるための「主活動」と、主活動を続けていくための人事や労務等の管理業務、物資の調達といった「支援活動」の2つに分けて、それぞれの機能における強みや弱みを分析していく手法のことです。

自社や他社に対してバリューチェーン分析を実施すれば、企業ごとの強みや弱み、市場における優位性を的確に把握できるでしょう。

分析を通して自社のケイパビリティが見えてきたら、これを軸に「ケイパビリティ・ベース競争戦略」や「ダイナミック・ケイパビリティ戦略」を立案・実行していきます。それぞれの戦略の概要については、以下をご確認ください。

ケイパビリティ・ベース競争戦略の概要 ケイパビリティを最大限活用し、市場における競争優位性を高めることを目的に、以下の4点を基準に立案・実践する経営戦略のこと。

  • ビジネスプロセスの重視
  • 主なビジネスプロセスの変換
  • 部門間のインフラ整備
  • トップによるケイパビリティ推進
ダイナミック・ケイパビリティ戦略の概要 時代や環境の変化といった外部要因も考慮し、以下の3点に重点を置いて自社の体制を変革・再構築していく経営戦略のこと。

  • 経営の危機を感知する「センシング」
  • 経営資源を再分配、再利用する「シージング」
  • 経営資源を再構築する「トランスフォーミング」

自社のコア・コンピタンスを把握する手順

  1. すべての社員から協力を得て、自社の強みや魅力、特徴を思いつくままに書き出す
  2. 書き出した強みをリストアップし、コア・コンピタンスの要件に照らして点数を付ける
  3. 点数の高い項目をコア・コンピタンスを見極めるための5つの視点で評価し、絞り込む

なお、コア・コンピタンスが満たすべき「3つの要件」と、絞り込みの際に必要となる「5つの視点」は、それぞれ以下の通りです。これらを基準に、自社が持つ強みのうちコア・コンピタンスと定義するのにふさわしい能力はどれか、慎重に検討してみてください。

コア・コンピタンスの3つの要件
  • 顧客に利益や価値をもたらす能力
  • 競合他社に真似されにくい能力
  • 多様な市場や商品に展開できる能力
コア・コンピタンスを評価する5つの視点
  • 模倣可能性は低いか(Imitability)
  • 移動可能性は低いか(Transferability)
  • 代替可能性は低いか(Substitutability)
  • 希少性は高いか(Scarcity)
  • 耐久性はあるか(Durability)

ケイパビリティやコア・コンピタンスの分析に使えるフレームワーク2選

バリューチェーン分析以外に、自社のケイパビリティやコア・コンピタンスを分析する際に役立つフレームワークとしては、「SWOT分析」や「マッキンゼーの7S」などが挙げられます。

そこで以下からは、「SWOT分析」と「マッキンゼーの7S」の概要について紹介していきますので、自社のケイパビリティやコア・コンピタンスを把握する際にぜひお役立てください。

強みの分析に使える「SWOT分析」とは

SWOT分析とは、主に組織や事業の現状分析に使われるフレームワークの一種です。具体的には、以下の表のように自社のプラス面とマイナス面を、内部環境・外部環境に分けてそれぞれ洗い出していきます。

内部環境 外部環境
プラス面 自社の強み(Strength) 自社にとってプラスとなる外部環境の変化、機会(Opportunity)
マイナス面 自社の弱み(Weakness) 自社にとってマイナスとなる外部環境の変化、脅威(Threat)

強みの分析に使える「マッキンゼーの7S」とは

7Sとは、適切な経営戦略の立案や達成を目的に、経営資源のうちハード要素に当たる3つのSとソフト要素に当たる4つのSを足した「7つのS」を基準に組織を分析するフレームワークです。

経営資源の3S(ハード要素)
  • 戦略(Strategy)
  • 構造(Structure)
  • システム(Systems)
経営資源の4S(ソフト要素)
  • スキル(Skills)
  • スタッフ(Staff)
  • スタイル(Style)
  • 共有価値観(Shared Values)

7つの経営資源を軸に自社の現状を分析することにより、会社の特徴や強み、今抱えている課題を理解できるようになるため、ケイパビリティやコア・コンピタンスの把握にも役立ちます。

強みを軸にした企業経営は、ケイパビリティとコア・コンピタンスの違いを理解するところから

強みを軸にした企業経営は、ケイパビリティとコアコンピタンスの違いを理解するところから

市場において、中小企業が少ない経営資源で大企業に打ち勝つには、組織的能力であるケイパビリティと会社の中核的能力であるコア・コンピタンスの両方を把握・活用する必要があります。

異なる視点から自社の強みを理解し、武器として活用するには、両者の違いを理解しておかなければなりません。自社の市場における競合他社への優位性を高めるために、ケイパビリティ・ベース競争戦略の立案やコア・コンピタンス経営を実践していきたいと考えているなら、まずはケイパビリティとコア・コンピタンスの違いを理解するところから始めると良いでしょう。

なお日創研では、自社独自の強みを見出し、業績をアップさせたいと考えている経営者や経営幹部の方に向けて「業績アップ上級コース」を開催しています。

これからケイパビリティやコア・コンピタンスを軸とした経営戦略を立案し、市場における戦い方を変えていきたいと考えているなら、日創研の「業績アップ上級コース」の受講と、その前に修了が必要な「新しい時代の業績アップ6か月セミナー」の受講を併せてご検討の上、お気軽にご相談ください。

業績アップ上級コース

将来を見すえた顧客視点を身につけ、成功戦略を構築する。「コア・コンピタンス経営の実現」に向けて『コア・コンピタンス育成計画書』を作成する。

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