2025.12.2

コーチングで活用される手法とは?実施方法や質問例を交えて解説

コーチングで活用される手法とは?実施方法や質問例を交えて解説

コーチングは、コーチとの対話を通じて本人の気づきを促し、自発的な成長を支援するコミュニケーションです。会話の流れを整理し、体系的にセッションを進めるためにはコーチングのフレームワークを活用することが大切です。

特に「GROWモデル」は、目標達成や問題解決をサポートする基本的な手法として、ビジネスの現場でも広く活用されています。

本記事では、全国14,000社以上の会員企業様を持ち、多くの中小企業の人材育成を支援してきた日創研が、コーチングの手法について解説します。具体的な進め方やポイントを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

人材育成に活用される「コーチング」とは

コーチングとは、相手の主体性を引き出し、自発的な成長や目標達成を支援する対話型の手法です。単なる指導や教育ではなく、質問や傾聴を通じて本人の気づきを促す点が特徴です。

人材育成のゴールは「自ら学び続ける人材」を育てることにあります。しかし、受け身の指導だけでは能動的な学習や行動を生み出すのは難しいものです。その点、コーチングは「答えは本人の中にある」という前提に立ち、自律的な成長を後押しする仕組みとして注目されています。

コーチングには、目的や対象に応じていくつかの代表的な種類があります。

▼コーチングの種類(例)

  • ビジネスコーチング:職場での成果向上やスキル開発を目的とする
  • エグゼクティブコーチング:経営層やリーダー層が意思決定やリーダーシップを高める
  • ライフコーチング:仕事や私生活を含め個人の人生目標達成を支援する など

コーチングを人材育成に取り入れる効果

コーチングを導入すると、社員のモチベーション向上や課題解決力の強化、主体的なキャリア形成の促進といった効果が期待できるでしょう。

コーチとの対話を通じて自己理解が深まることで、自ら目標を設定し行動する力が養われます。さらに、成長を支援する信頼関係が、上司と部下のコミュニケーションを活性化させます。

また、個々の強みや価値観を尊重する姿勢は、離職防止やエンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

コーチングの必要性

変化の激しい現代では、従来型の一方向的な教育だけでは人材の自律的な成長を支えることが難しくなっています。

技術の進化やビジネス環境の変化が加速するなか、上司が一方的に教えられる知識には限界があります。さらに、多様な価値観を持つ人材が増え、一律の指導よりも個々に合わせた支援が求められることもコーチングが必要とされる背景です。

そのため、コーチングは単発の施策として取り入れるのではなく、管理職研修や組織文化の変革とあわせて進めることが重要です。

コーチングの基本的な実施方法

コーチングを効果的に行うには、明確なステップを踏むことが重要です。以下では、実際の進め方を4つの段階に分けて解説します。

ステップ 内容
1 ヒアリング
現状把握
・まずは対象者の現状を丁寧にヒアリング
→現在どのような業務を担当しているのか、どこが順調でどこに課題を感じているのかを確認・業務内容だけでなく「感じていること」「悩み・障害」「周囲からのフィードバック」まで幅広く聞き取る
→事実と感情の両面を整理することで、次のステップにつながる具体的な情報が得られる
2 課題と解決策の
具体化
・ヒアリングで得た情報をもとに、真の課題を一緒に探る
→背景や原因を掘り下げ、似た経験があれば振り返ることで課題の本質が見えてくる・課題が明確になったら、複数の解決策を考える
→何が変われば改善できるかを議論し、本人の主体性を引き出す
3 自身の目標と
達成方法を明確化
・理想の状態や目標像を描いてもらう(目指すゴール)

・目標を達成するために必要なスキルや具体的な行動、期限、想定される障害を整理

4 目標をもとに
行動計画を作成
・目標達成へ向けた行動計画を策定する
→「いつ」「何を」「誰が/誰に」「どのように」実行するかを具体的に決めることがポイント・短期間で取り組めるステップを盛り込み、進捗確認や振り返りのタイミングもあらかじめ設定すると、継続的な成長をサポートしやすくなる

進めるうえでのポイント・注意点

コーチングを効果的に活用するには、いくつかのポイントがあります。ここでは特に押さえておきたい3つの視点を紹介します。

継続的に実施

週1回や月1回など定期的な対話の場を確保し、行動の定着や変化を丁寧にフォローしましょう。コーチングは一度きりでは十分な成果を得にくいためです。

毎回の面談では「何を目的に話すのか」を明確にすることで、形だけの面談になるのを防げます。

信頼関係の構築

相手の話を否定せず、しっかり耳を傾ける姿勢を意識して信頼関係を築きましょう。秘密を守る態度を示し、コーチと育成対象者が安心して話せる関係を作ることが欠かせません。

評価や指導の要素が前面に出すぎると本音が引き出しにくくなるため注意が必要です。

双方向のコミュニケーション

コーチングでは双方向のコミュニケーションを意識し、「教える」よりも「引き出す」姿勢を持つことが成功への鍵です。

なぜ・どう思うかなどを問いかけるオープンクエスチョンを活用し、相手が考える時間をしっかり確保しましょう。沈黙を恐れず、必要に応じて問い直すことも有効です。

コーチングで使用される手法「GROWモデル」とは?

コーチングで使用される手法「GROWモデル」とは?

コーチングには、より効果的に進めるためのフレームワークがあります。

そのなかでもGROWモデルは、コーチングにおいて目標設定から行動計画、さらに評価までを体系的に支援する基本的な手法です。4つのステップを順序立てて進めることで、本人の主体性を引き出し、目標達成を現実のものにします。

GROWモデルを活用すると、コーチングの進め方が体系的になり、目標達成までの道筋を明確に描けるため、コーチングで幅広く取り入れられています。

ここではGROWモデルの各ステップの概要と質問例を紹介します。

G:Goal(目標設定)

まず、望む結果や理想の状態を明確化します。ゴールが曖昧なままでは、次の行動が定まりません。

▼質問例(テーマ:営業チームの成果向上)

  • 「今期、どんな成果を出したいですか?」
  • 「数値目標や質的な目標は何ですか?」

この段階で具体的な数値や達成基準を設定することで、進捗の評価をしやすくします。

R:Reality(現状把握)

次に、現在の立ち位置や課題を明確にします。ゴールと現状のギャップを把握することで、解決すべき問題が見えてきます。

▼質問例(テーマ:営業チームの成果向上)

  • 「現在の進捗はどのくらいですか?」
  • 「どんな障害が成果達成を妨げていますか?」

現状分析では、事実だけでなく周囲の環境やチーム体制なども整理すると効果的です。

O:Options(選択肢の探求)

課題が特定できたら、可能な解決策を幅広く検討します。選択肢を広げることで、柔軟な発想や新しいアイデアが生まれやすくなります。

▼質問例(テーマ:営業チームの成果向上)

  • 「他にどんな方法が考えられますか?」
  • 「もし制約がなければ何をしますか?」

この段階では、実現可能性よりもアイデアの数を重視することがポイントです。

W:Will(行動決定)

最後に、実行への意思を固め、具体的な行動計画を決定します。ここで初めて「いつ」「何を」「誰が」行うかを明確にすることで、目標達成に向けた一歩を踏み出せます。

▼質問例(テーマ:営業チームの成果向上)

  • 「まず何から始めますか?」
  • 「いつまでにやりますか?」

行動計画には期限や達成基準を盛り込み、定期的な振り返りの場を設けると継続しやすくなります。

GROWモデル以外のコーチングの手法を紹介

コーチングにはGROWモデル以外にも、目的や状況に応じて活用できる手法があります。ここでは「OSKARモデル」と「CLEARモデル」を詳しく解説します。

OSCARモデル

OSCARモデルは、クライアントが望む未来像を描き、現状とのギャップを数値化しながら進める方法です。課題を深掘りするよりも、成果から逆算して行動を考える点が特徴といえます。

▼OSCARモデルのステップ

項目 内容・質問例
O : Outcome
(成果)
望む成果や成功のイメージを描く

【質問例(テーマ:チームの業務効率改善)】
「効率改善が成功したとき、どんな状態になっていたいですか?」
「周囲からはどのように評価されたいですか?」

S : Situation
(状況)
現在の業務フローや背景を理解する

【質問例(テーマ:チームの業務効率改善)】
「今の業務フローでうまくいっている点は何ですか?」
「どこにボトルネックを感じますか?」

C : Choices
(選択肢)
取り得る改善策とその影響を検討する

【質問例(テーマ:チームの業務効率改善)】
「他にできそうな改善策はありますか?」
「それぞれの案のメリットとリスクは何ですか?」

A : Actions
(行動)
実現可能なアクションに落とし込む

【質問例(テーマ:チームの業務効率改善)】
「今週からできる一歩は何ですか?」
「誰と協力して進めますか?」

R : Review
(振り返り)
実行結果や気づきを共有し、次の学びにつなげる

【質問例(テーマ:チームの業務効率改善)】
「実行してみてどうでしたか?」
「次回は何を変えますか?」

CLEARモデル

CLEARモデルは、コーチング開始時に目的や期間、進め方を明確化することから始まります。感情や背景に踏み込みながら動機を引き出し、信頼関係や心理的安全性を重視する点がポイントです。

項目 内容・質問例
C : Contract
(契約)
目的・期待値・進行方法を合意する

【質問例(テーマ:キャリア相談)】
「今日はどのテーマについて話したいですか?」
「この時間をどんなふうに活用したいですか?」

L : Listen
(傾聴)
相手の話や感情を深く聴く

【質問例(テーマ:キャリア相談)】
「今の状況についてどう感じていますか?」
「最近一番印象に残っている出来事は何ですか?」

E : Explore
(探求)
背景や根本原因、可能性を掘り下げる

【質問例(テーマ:キャリア相談)】
「その選択があなたにとって重要な理由は何ですか?」
「理想のキャリアを描くと、どんな要素が入りますか?」

A : Action
(行動)
気づきを具体的な行動に変える

【質問例(テーマ:キャリア相談)】
「この1週間でできる具体的な一歩は何ですか?」
「誰に相談しますか?」

R : Review
(振り返り)
セッションで得た気づきや進捗を内省する

【質問例(テーマ:キャリア相談)】
「今日の話で一番の気づきは何ですか?」
「次のステップに向けて何が必要ですか?」

コーチングに必要なスキルとは

コーチングは一方的な指導ではなく、対話を通じて相手の内面にある答えを引き出すプロセスです。聴く・問いかける・適切に伝えるという3つの要素が揃うことで、信頼関係を築きながら自発的な成長を促せます。

ここでは、コーチに必要な3つのスキルを紹介します。

傾聴力

傾聴力とは、相手の話を評価や先入観を交えず、言葉や感情、背景まで理解しようと耳を傾ける力です。安心して本音を話せる環境をつくることで、相手は自己認識を深めやすくなり、内省と自発的な行動変化が生まれます。

具体的には、相づちや要約、視線や表情といった非言語のサインを活用し「聴いている」姿勢を示すことが大切です。また沈黙があっても恐れずに待つことで、相手が考えを整理する時間を確保でき、より深い対話につながります。

質問力

質問力は、相手が自ら考え、気づきを得るよう促す問いを投げかけるスキルです。コーチングは答えを与える場ではなく、本人が答えにたどり着く過程を支援するもの。的確な質問は視点を広げ、潜在的な課題や可能性を引き出します。

「はい/いいえ」で終わらないオープンクエスチョンを意識し、「何が一番の障害だと思いますか?」「理想の状態はどのようなものですか?」など、相手の思考を深める問いを選ぶことがポイントです。

フィードバック

フィードバックは、相手の行動や成果に対して客観的事実と具体的な改善・強化点を伝え、学びを定着させる力です。自分では気づきにくい視点を第三者が示すことで、現状を把握し次の行動に活かすことができます。

効果的なフィードバックには、肯定的な点を先に示す、タイミングを逃さないといった工夫が欠かせません。評価ではなく成長支援の姿勢を保つことで、相手との信頼関係を維持しつつ、さらなる成長を後押しできます。

手法を活用しながらコーチングを進めよう

手法を活用しながらコーチングを進めよう
コーチングを効果的に進めるには、GROWモデルをはじめとした手法が大きな助けになります。現状把握や行動計画など、コーチングの各ステップを漏れなく進められるため、安定した質のセッションが実現できます。

安定したコーチングを行うためにも、紹介した手法も活用しながらセッションを行いましょう。

なお、日創研では、実践を中心にマネジメントコーチングの力を養う「企業内マネジメントコーチング6ヶ月プログラム」をご用意しております。

講義に加え、ワークや1on1、ケーススタディなどの演習を多く取り入れ、現役経営者による組織開発のアドバイスが受けられるサポーター制度もあります。

部下育成やコミュニケーション力、フォロワーシップの理解など、マネジメントコーチングを体系的に学びたい方は、ぜひ参加をご検討ください。

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質問や承認などで部下の意欲や行動を引き出し、結果をつくる人材を育てる手法がコーチングです。前向きで行動的な部下を育てたい上司には必須です。

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