社員教育のためのカリキュラムの作り方は?研修内容の具体例を教育対象の階層別に紹介

限られた時間で計画的に社員教育を進めていくには、教育カリキュラムの活用が効果的です。
そこで今回は、全国に14,000社以上の会員企業様を抱え、多くの中小企業の社員教育を幅広くサポートしてきた日創研が、教育カリキュラムの重要性や作り方について解説していきます。
また併せて、教育対象者の階層別に社員教育カリキュラムの具体例も紹介していきますので、教育カリキュラムとは何か、その作成目的や作り方がわからずお悩みの経営者の方、人事担当者の方は、ぜひ参考としてご覧ください。
目次
社員教育における教育カリキュラムの重要性
一般的に教育カリキュラムとは、学習する内容や時間、手段の他、学習後の効果の測定やフォローアップの方法までを総合的に取りまとめた教育計画のことです。なお社員教育においては、単なる計画だけでなく教育施策や教育課程、社員向けの研修そのものという意味で使われることもあります。
どのような目的や目標の達成を目指し、どのような内容・順序・方法で社員教育を進めていくのかをまとめた教育カリキュラムは、社員教育のガイドブックのような役割を担うものです。
限られた勤務時間の中で学習時間を捻出し、他の社員の協力を得て進めていく社員教育では、あらかじめカリキュラムを作成して計画的に教育を進めていかなければ、組織として設定した目的や目標を達成できないというリスクがあります。
そのため、事前に社員教育の目的や目標を確認した上で自社に合う学習の内容や手法、順序を整理してカリキュラムにまとめておくこと、またカリキュラムに沿って計画的に施策を実践することが大切になってくるのです。
社員教育のためにカリキュラムを作成する目的は?
社員教育に注力していくにあたり、教育カリキュラムを作成する目的としては以下のようなものが挙げられます。
- 対象者や目的、学習内容、期日などの社員教育の全体像を把握しやすくするため
- 自社に合った学習の内容・方法を設定し、社員教育の成果や即効性を高めるため
- 組織が達成を目指す目的と学習の内容、計画に齟齬がないか定期的に確認するため
社員教育には一定の時間がかかるため、教育担当者は、施策を実行している間もきちんと当初の計画通りの社員教育ができているか、方向性がズレていないか等について定期的に確認する必要があります。
中長期的な取り組みになるからこそ、社員教育を始める前に質の高い教育カリキュラムを作成しておくことが重要になるのだと理解しておきましょう。
代表的な社員教育の種類とカリキュラムの具体例
社員教育のカリキュラムは、大きく「社員教育の目的」と「対象者の階層」の2点を軸に考えていきます。社員教育の目的と対象者の階層、それぞれを軸とした社員教育の具体例としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
「社員教育の目的」を軸とした研修の例 | ・ビジネスマナー研修 ・ビジネスマインドセット研修 ・チームビルディング研修 ・マネジメント研修 など |
「教育対象者の階層」を軸とした研修の例 | ・新入社員向けの研修 ・若手社員向けの研修 ・中堅社員向けの研修 ・管理職向けの研修 など |
日創研における階層の考え方、各階層に必要な教育カリキュラムとは
上記のうち社員教育の目的を軸に設定された研修では、組織としての目的を果たすために習得を目指すスキルが明確になっているため、教育カリキュラムも比較的組みやすいと言えます。
一方で教育対象者の階層を軸に社員教育を進めたい場合は、自社の現状やビジョン、経営戦略等も加味し、各階層の社員に身に着けてほしいスキルや知識に優先順位をつけてカリキュラムを設定していく必要があるため、目的を軸に考えるケースよりも難しいと言えるでしょう。
そこで以下の一覧に、教育対象者の階層を軸に社員教育を進めたい場合に盛り込まれる可能性が高いカリキュラムの内容例について、それぞれまとめました。階層別の社員教育カリキュラムをイメージする上での参考として、ひと通りご確認ください。
【階層別】各社員研修における社員教育カリキュラムの内容例
新入社員向けの社員教育の場合 |
・社会人としての基本的なビジネスマナー ・報告、連絡、相談など職場における基礎的なコミュニケーション術 ・ビジネスマインドセット ・基本的なビジネススキル ・現場での業務に必要な技術、知識 ・基本的なパソコンスキル など |
若手社員向けの社員教育の場合 |
・タイムマネジメントスキル ・ロジカルシンキング ・問題解決能力 ・可能思考能力 ・モチベーションの管理方法 ・コミュニケーションスキル ・キャリア志向やビジョンについて など |
中堅社員向けの社員教育の場合 |
・問題解決能力 ・可能思考能力 ・セルフマネジメント ・マネジメントの基本 ・人材育成の基本 など |
管理職向けの社員教育の場合 | ・リーダーシップとフォロワーシップについて ・マネジメントスキル ・コーチングスキル ・キャリア開発支援スキル ・コンプライアンスとハラスメント ・経営や業績アップに関する学習 など |
社員教育のためのカリキュラムの作り方
ここからは、社員教育のためのカリキュラムを作る際の手順について、大きく5つのステップに分けて説明していきます。自社に合った社員教育カリキュラムを作る上での参考として、順にご確認ください。
【その1】自社にとっての人事理念を明らかにする
人事理念とは、経営理念やビジョン、人事戦略等をもとに導き出した「自社が求める人物像」のことです。
人事理念を明確化しておかなければ、これからの自社の成長と発展に必要な人材の要件や社員教育で達成するべき目的、方向性が見えてきません。
また目的が明確にならないと、社員教育として実施すべき教育施策や学習のテーマ、ゴールを定めることもできないため、社員教育のカリキュラム作りは、まず自社の人事理念を明らかにするところから始めるとよいでしょう。
【その2】自社の現状を調査し、課題を把握する
人事理念が明確になったら、次は、社員教育の対象者や社員教育を受けたスタッフの受け入れ先となる階層、部署、職種の従業員にヒアリングをして、自社の現状や経営上・人事戦略上の問題と課題を把握します。
企業としての社員教育の目的・目標は、組織全体、またそこで働く一人ひとりの社員が抱える課題を改善または解決し、現状をより良くするためのものでなければなりません。社内の状況に合った社員教育の目的・目標を適切に設定できるように、しっかりと課題の洗い出しを行いましょう。
【その3】目的や階層別に社員教育の目標を具体化する
組織全体としての社員教育の目的・目標が定まったら、これを教育対象者の階層や部署ごとの目標に落とし込んでいきましょう。なお、階層や部署レベルの目標の具体例としては、組織全体の目的や目標達成に必要な技術・資格・知識を数か月や1年など、ある程度の期間で獲得することなどが挙げられます。
目標設定がうまく進まないという場合は、フレームワークを利用して自社の現状や社員教育を通して改善・解決を目指すべき課題について整理してみるのもおすすめです。以下の記事に、社員教育や人材の育成に役立つフレームワークをまとめていますので、興味のある方はこちらも併せてご確認ください。
【その4】獲得を目指すスキルと優先順位を考える
次は、社員教育の目的と目標から逆算して、身につけるべきスキルと達成期日を明らかにしていきます。具体的には、以下のような手順で目的達成に必要なスキルとそれぞれの学びにかけられる時間、最適な学習内容と順序、優先順位などについて考えていくと良いでしょう。
- 目標を達成するためには、具体的にどのようなスキル、知識、資格が必要なのか
- 1で確認したスキルや知識、資格を得るには、どのような教育機会が必要なのか
- 今回の社員教育のために、どのくらいの予算と人的コストをかけられるのか
- 必要なスキルや知識、資格を獲得するために、どのくらいの時間や予算がかかるか
- 社員教育で自社が獲得を目指すスキル・知識・資格の優先順位はどのようなものか
- それぞれのスキル・知識・資格の習得のために捻出できる時間はどのくらいか
- 総合的に考えて、どのような順番で各スキル・知識・資格の獲得を目指すべきか
【その5】自社の社員教育カリキュラムを作成する
社員教育によって社員に獲得してほしいスキルや知識、資格とその優先順位を決定できたら、スケジュールや教育する手段・手法も考慮しながらカリキュラムを決めていきます。
なお社員教育、各階層向けの社員研修に使われることが多い代表的な教育手法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 上司や先輩の監督のもと、実務経験を通して仕事に必要な技術や知識を学ぶ「OJT」
- 実務とは別に時間や場所を確保し、集合型の研修やセミナーに参加して学ぶ「OFF-JT」
- インターネットを介して社外の講義等にリアルタイムで参加する「オンライン研修」
- 参加社員がグループとなり、作業やプレゼン等の課題に取り組む「グループワーク」
- 業務に関する学習にかかる費用、時間等の確保を企業側が支援する「自己啓発支援」
- Web上に用意された文章や動画等のコンテンツで社員教育を行う「eラーニング」
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社員教育に適した手法は、会社によって異なります。自社の方向性や教育対象者との相性はどうか、また自社にとって取り入れやすいかなども考慮しながら、さまざまな選択肢の中から複数の手法を選び、組み合わせてみましょう。
社員教育カリキュラム作成時のポイントと注意点
ここからは、社員教育カリキュラムを作成する際に意識してほしいポイントと注意点についてまとめて紹介していきます。
教育カリキュラムの作成は、社員教育において欠かせない事前準備です。実際に教育施策をスタートさせてから学習の内容や計画に問題が見つかることのないように、以下を確認した上でカリキュラムを作成するようにしましょう。
- 必ず組織全体の目的を定めた上で、教育対象者やカリキュラムを具体化する
- カリキュラムは対象者の階層別かつ体系的に、教育内容に優先順位をつけて作成する
- 社員さんに会社側の意図、習得してほしいことが明確に伝わるような内容にする
- 余裕をもって社員教育を進められるように、カリキュラムの盛り込みすぎに注意する
- カリキュラムの内容は、時代の変化や社員の特性の違いに合わせて定期的に見直す
- カリキュラムの作成時は学習の内容や手段、順序等だけでなく、効果の振り返りや評価、フィードバック、学んだことのアウトプットの方法についても検討しておく
社員教育を開始する前に具体的なカリキュラムを作成しよう
社員教育がうまくいけば、対応できることが増えて企業としての競争力を高められる他、業務の効率や生産性、人材の定着率を向上させ、離職率を低減する等のメリットが期待できます。
会社として掲げた目的や目標を達成し、できるだけ早く社員教育を成功させるためにも、あらかじめ具体的な教育カリキュラムを作成することが求められるのだと理解しておきましょう。
なお日創研では「自己への気づき」をテーマに、社員さんが既に持っている強みや弱み、思考パターン、スキル、課題等について分析・認識してもらうためのセミナーとして「SA自己成長コース」を開催しております。
全社員を対象にビジネスマインドをアップデートするための学習機会を提供したい、社員教育の第一歩として社員に自身という人材を再認識する機会を提供したいなどとお考えの場合は、ぜひ日創研の「SA自己成長コース」の受講もご検討の上、お気軽にご相談ください。
